タダです.
Twitter でいろんな人が感想をツイートして気になっていた「その仕事、全部やめてみよう」を読み終えたので,書評記事を書いていきます.
目次
本書は以下の章立てになってます.総ページ数は222Pの本です.
- 第1章 「谷」を埋めるな、「山」を作れ!
- 第2章 「ハンマーと釘」の世界の落とし穴
- 第3章 「ラストマン戦略」で頭角をあらわせ
- 第4章 「To Stopリスト」をいますぐ作る
- 第5章 職場は「猛獣園」である
著者の小野和俊さんはクレディセゾン常務執行役員CTOを勤められています.著者はプログラマでのキャリアをスタートし,サンマイクロシステム->アプレッソを渡って来られベンチャーも大企業での仕事も経験されて「どんな仕事にも共通する無駄を排して仕事を合理的にする」視点(メッセージ)と事例を本書で5つの章に分けて説明しています.
5つのメッセージから自分が感じたこと
各章のメッセージと事例を読んで自分が感じたことをまとめていきます.
第1章 「谷」を埋めるな、「山」を作れ! - 市場で勝つ
仕事で商品(プロダクト)の短所(谷)をどうにかするのはではなく長所(山)を伸ばそうが本章のメッセージです.競合が現れた時にその強みと自分たちの弱みを比較し,弱みを改善することに時間を使わず強みをより尖らせて優位性をとり,短所は最低限の機能にするなどある程度の割り切るアプローチが紹介されてます.なぜ短所改善に奔走しないのか,という問いには「短所がすでに競合製品が世の中に示した体験や価値」であるためとしています.確かに既に提供されているものと同じものを作っても差別化できません.
本章の事例としてマイクロソフト社の製品 BizTalk とアプレッソ社の DataSpider が競合していた時のお話は企業規模が全く異なる中で顧客の製品支持を集めた結果を収めた,山を作り続ける大切さがわかりやすい事例だと感じます.また,山を作るためのチームには Amazon の2ピザルールが適しているというのも少数精鋭で変化に強く,チームとして一丸になりやすいなど取り組む効果を理解できました.弱みを埋める時間はそれだけ強みを出す時間が取れなくなり,強豪とのビハインドになってしまうため優先すべきは強み出しだなと見方が変わった章でした.
第2章 「ハンマーと釘」の世界の落とし穴 - 正しく実行する
仕事で自分が興味のある技術やスキルに気を取られず,「その仕事は誰のどんな喜びに寄与するのかを理解すること」が本章でのメッセージです.ありがちですが流行りの技術を使いたくてその技術を採用する話を聞きますが,より良い技術も大切ですがその先の利用者に満足してもらえるものかは考えなくてはならないでしょう.自分の仕事の提供先が喜んでもらえないものを出しても魅力がないと同義だと思います.仕事でアイデアを出したりする時,アクションをとっていく中でちゃんと目的を見間違わないことを筆者は繰り返し話しています.例えば,近年のバズワードである DX も言葉が一人歩きして DX をやることが目的化して解決したい課題,その先の喜んでくれたり驚いてくれる姿をイメージして正しく取り組むことが大切だと再確認できたなと思います.
第3章 「ラストマン戦略」で頭角をあらわせ - 自分を磨く
個人の成長船長戦略として日々の仕事に「見せ場」を作って特定の領域で秀でた「ラストマン戦略」を立てるのが本章のメッセージです.
「ラストマン戦略」とはグループ内で自分が一番になれそうな領域を決め、「あの人がわからないなら、誰に聞いてもわからないよね」という、いわば最後の砦ともいうべきスペシャリストを目指す成長戦略だ。
本章のエピソードの中でエンジニア風林火山というのがあります.風林火山の漢字に当てはめてそれぞれの役割を担ったエンジニアを紹介し,人にはそれぞれの強みの伸ばし方があり,他人の優れた能力は取り入れて自分自身の成長の形を模索し続けるというのは自分が思っていたことだったので著者の考えとリンクした章でした.自分の体験でも脳筋キャラを会社内で確立した時に筋トレ,ダイエット,食事ならタダに聞くといいかもという流れができた経験があります.その頃会社で減量してボディビル大会に出るのは自分だけでした.そういう意味でラストマン戦略が叶った経験でした.引き続き技術でも頑張りますw
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第4章 「To Stopリスト」をいますぐ作る - 生産性を上げる
自分がやらなきゃいけないことを「To Do リスト」にしている人は多いのではないでしょうか?逆にやめても影響がない仕事を列挙する「To Stop リスト」を作って棚卸しするのが本章でのメッセージです.本章では,リストを作るタイミングや見直す業務対象を具体的に説明してくれているので,棚卸ししてみると実はやらなくてもいい仕事があるかもしれません.
日々の業務の中で状況は刻々と変化するはずなので,自分の要不要なタスクを見直して本質的に時間を割くべきことを選別するのは未来の自分やチームへの時間投資だと思いました.アジャイルのインセプションデッキにも「To Stopリスト」と同じようにやらないことリストを作るというのがあるなと思いました.
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第5章 職場は「猛獣園」である - チームで戦う
チームとして成果を上げるためにどうするかはチームによって事情や状況は違うと思いますが,筆者がベンチャーと大企業でのそれぞれの経験が本章で事例紹介されてます.タイトルにあるように猛獣園のようなチームはベンチャー時代の多様性かつ突き抜けた人材が溢れてた頃のお話です.筆者の経験として突出した能力のある人は癖があるというものですが,自分も出会ったことあります.癖のある人と他のメンバーがどう関わればチームとしてパフォーマンスを出せるかを突き詰めればより強いチームになれると思います.アプローチとして各々の意見の時間確保とその傾聴,締めるところは締める,相手のことを全力で理解する,ファインプレーを賞賛する等がアプローチとして紹介されています. 自分の存在とパフォーマンスが正当に評価されており,意見も考慮・取り込んでもらえるのであれば不満は低く抑えられそうです.
また,チームの中での強力なプレイヤーがいるときのその人が強い分他の人が依存しているのを改善する方法や採用がなかなかうまくいかない時の対処なども本章で触れられ,チームで活動しているところに関連する視点をみれるので自分もまた行き詰まった時に立ち返りたいと感じました.
まとめ
「その仕事、全部やめてみよう」の章ごとで感じたことを書きました.本書では5つのメッセージから仕事の取り組みを見直す視点を学ぶことができますが,この視点とは別に「仕事を楽しむこと」も触れられていました.仕事は1日の大半の時間を充てるものなのでこの仕事は楽しい!と思えたらイキイキと取り組めると思うし,充実度が違うはずです.自分の大好きな漫画のハイキューでも同じようなエピソードがあるので,それを紹介して締めます.話の中で全国のトップ選手から凡庸なプレイをしていた選手に対してこんな問いかけをしているシーンがあります.
「月島くんさ、バレーボール楽しい?」
「いえ、特には」
「それ(楽しいと思えないの)はさ、下手くそなんだからじゃない?」
たかが部活と思いなんで全力で取り組むのかがわからなかった月島にバレーボールを全力で楽しんでいればそんなこと気にしなくてよくなる上に力が伸び,また別の景色を見えることができるかもしれないことを伝えたシーンだなと思います.そして,この煽りシーン後の試合で月島が覚醒し,主人公たちは地方大会を勝ち抜き全国行きの切符を手にします.本書の終わりにも家庭教師の先生とのエピソードで受験勉強の先にある「楽しさ」を伝えてくれたお話がありました.本書を読み終えて自分の仕事の無駄を取り払って合理化し,仕事を楽しむことを追求していくことでこれからもワクワクし続けたいと思えた本でした.本書は仕事の業種に関係なく楽しめる内容だと思うので気になる方は一読してみてはどうでしょうか?